今年度のノーベル平和賞に、バングラディッシュのグラミン銀行が選ばれた。
グラミン銀行は平和賞の受賞理由となった無担保融資(マイクロクレジット)以外にも、有担保の住宅ローン、レンタル事業のグラミンフォン、教育助成金などを事業としてやっているが、今回はノーベル平和賞の対象事業に絞って書くことにする。
なお、この記事は私がバングラディッシュに出かけて取材したのでも、ユヌスさんに会ってインタビューしたのでもなく、いろいろなWEB等の記事を参考に書いていますので、時点が古かったり、違っている部分もあると思います。気づかれた方はメールでご指摘頂けましたら出来るだけ速やかに確認の上修正も含んで対応させて頂きます。
ノーベル平和賞ということで、資金を貸して貰えたので、どん底の暮らしから脱出できたなど、融資後の生活面を主に報道されていて、グラミン銀行の「金融事業」の詳細報道がほとんどされておりません。
そこで、ここでは、金融事業の仕組みや運営方法に焦点を絞って進めます。
1.グラミン銀行のマイクロクレジット推進組織
ブランチ |
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全国で約1000箇所 構成は代表、副代表、センターマネージャー6名の8名体制が標準 |
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センター |
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1ブランチに約60センター 1人のセンターマネージャーが標準で10箇所のセンターを受け持つ |
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グループ |
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1つのセンターに最大8つのグループ 構成はグループ代表(借主)とメンバー4人の5人の顧客で構成される |
2.マイクロクレジット商品の概要
(1)利率:年利20%(一律)
(2)初期一人当たり貸出額:15〜16米ドル相当
(3)1回の貸出限度額:50米ドル相当
(4)担保:無担保、契約の有無は別として、実質的にはグループ全員が相互保証。
(5)返済方法:毎週センターで行なわれる返済集会に、借り入れしている本人が現金を持参して返済
(6)返済督促、カウンセリング:毎週の返済集会で、一人でも返済が滞り、解決できないと、現金返済ができるまで、
センター所属の全グループが残り、返済集会は終わらない。
3.融資の流れ
グループ代表がメンバー5名連記した融資申請書を提出 |
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代表は、資金需要があり、返済可能性が大きく、かつ保証できるメンバーを自分で選ぶ |
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2人に15〜16ドル融資がおりる |
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グループ代表は自分ではないメンバー中2名を選ぶ |
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↓6週間返済が正常になされることが条件
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更に2名に15〜16ドルが融資される |
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2名はグループ代表以外のメンバー |
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↓6週間返済が正常になされることが条件 ↓
4.グラミン銀行マイクロクレジットの金融的特長
- (1)グループ全員が、他のグループメンバーが返済できなかった場合には、肩代わり返済をする。
- ○このことで、返済率は98%と日本の消費者金融大手の95%程度と較べると高い。
- ○返済できない2%の場合は、グループ全員がブラックリスト化されるので、日本の大手の場合より、
- 実際の返済できない人は多いことになる。
- ○グループ代表は、返済可能性が高い人であり、かつすぐに借り入れをする人を選ぶので、
- 与信の向上、貸出の稼動率の向上が望める。
- (2)返済は、毎週返済集会に現金持参
- ○現金を持参するので、ATMなどの設備費用は要らない。
- ○センターマネージャーは1名ながら、数グループが一同に会するので、返済受取りに顧客の下へ出向く
- 必要がない等、効率的に業務ができる。
- ○返済ができない場合は、センター所属の全グループが残されて、厳しい指摘を受けるので、
- グループ員が肩代わり返済できないときは、他グループが、グループ間で融資をすることになる。
- この点では、無尽講に近いかもしれない。
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- (3)宣伝費は要らない
- ○グループ代表が、地域の中で分かり合っているお金を借りたい人に当たりをつけるので、
- 宣伝費をかけて、顧客を一人一人獲得する宣伝は必要ない。
- ○ノーベル平和賞受賞で知名度も上って、ますます宣伝は不要になっている。
- ○教育助成金などで、ローン顧客の予備軍に対する知名度、イメージアップがされている。
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