弁護士、弁理士同様に、掛かった経費は貰おう 2010.1.28
1.過払い金返還の動向
- 大手4社だけで、過払い金支払い金額が1兆円を超えてきている。
- 貸金業法、出資法改定により、利息制限法金利への移行、総量規制といった変更に向けて、定常の営業から生まれるキャッシュフローで過払い金支払いを賄えないという状況は、中小だけではなく、大手にも及んできている。
- 既に、経営破たんした消費者金融会社や信販会社においては、債権者の中の過払い金請求分についても支払える率は低くならざるを得ない。今後、殆どの消費者金融会社が、貸金業法での営業が成り立つか危ぶまれる状況にある。(既に経営破たん、廃業は高水準に推移しており、過払い金を支払える会社がなくなる状態は今後普通になってくる)
- 現在までは、多重債務者を中心とする過払い金請求は、過払い金請求後貸してもらえないことを覚悟する人に限定されていた。今後は、破綻する消費者金融会社はもちろんだが、そうでない会社でも実質的に融資ストップ状態になることを想定する人が増える。今迄は、借り続けるために過払い金返還請求をしていなかった人達が、まるで取り付け騒ぎのように雪崩を打って過払い金返還請求を行うことになろう。
- 10年の時効起算が完済からとなっている今、このような正常な融資客までが過払い金返還請求に加わると、現在までの過払い金支払い金額の数倍から10倍程度になると推定され、請求はしたけれど、当然消費者金融会社からは支払って貰えないという状態になる。
2.過払い金返還は、出費を差し引いて支払いをすべき
- 現状では、過払い金請求がされると、消費者金融会社、クレジットカード等の会社は、過払い金を100%支払うために、過去に過払い金が有ったがために支払った過払い税金、過払い金支払いのための諸経費を自社で負担した形で、多重債務者宛てに過払い金を100%支払っている。
- 返還請求の金額にもよるが、これらの過払い金に関する支出を含むと、実際の資金は過払い金支払額の1.5倍程度が必要となっている。
- したがって、この負担分を差し引いて支払えれば、資金的にはより多くの多重債務者に対応できる。
3.支払いから控除すべき負担はどの程度か
(1)過払い税金
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- 対象年度によって、租税負担率は変わりますが、例えばアコム2005.3月期決算での租税負担率は 34.1% となっています。
- 過払い返還金額が売上に計上されていたので、これを返すということは、その分の売上を無かったことにする経理処理になります。
- そこで、既に支払った税金は、過払い金を売上に含んでいるので、過払い金相当金額について支払った税金は、過払い金の経費と同様な出費ということになります。
- 該当年の租税負担率で、過払い金に対して、税負担をしていたことになります。すなわち、過払い税金ということになります。
(追記)2011.3.11 武富士の「調査報告」(2月26日公表)の中で「税金の還付問題」が取り上げられている
- 武富士の税金還付請求(更正請求)で小畑弁護士は「利息制限法超過金利は最高裁判断により無効とされたとなると、無効収益に課税すること自体おかしい」と見解を述べた。
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- (追記)2011.9.1日本貸金業協会の「JFSANEWS」で法人税の繰り戻し還付要求を、金融庁の税制改正要望に入れたことを明らかにした。
- これによると、時効の10年として切った場合でも、還付される税額が3300億円としている。勿論完済客への過払い金支払いなどを考えるとこれ以上になると思う。
- 公的にはじめて業界が正当な要望(これでも要望にしかなっていないが)を出したことになる。
(2)システム費用
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- 各社過払い金返還金額や、取引履歴の開示には、コンピューターのシステムで計算することになります。
- 完済後10年間は時効に該当せず、返還する対象となったことから、通常のデーター保管期間を過ぎることも多くなることなど、例外的な個別対応などに相当コストがかかります。
- 対象期間、取引期間などによって異なりますが、概略1件当たり数万円は掛かると算定されます。
(3)返還のための事務コスト(印紙等も含む)
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- 過払い金支払い手続きのために、過去の取引明細を要求され、個別に送付する(本人確認などの手数もかかります)費用。
- 過払い金支払いに伴い、契約変更などの和解契約書作成費用、収入印紙などの費用。
- 情報センター登録変更手続き、費用。
- その他、連絡のための通信費、人件費など諸経費。
もう1つの考え方として、上記過払い税金や、各種経費は、金融庁が認めて、グレーゾーンでの営業を認める契約書交付などの条件を規制し、その実施を検査してきたという事実から、国家が賠償するという考えもある。
これによれば、過払い請求された金額から、経費、過払い税金を控除して支払うのではなく、満額支払うことになる。
国家賠償請求については、こちらを参照下さい。
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